車の熱や振動に耐えられる“究極の車載品質”
という思いを込めた「Zシリーズ」

この10年で自動車を取り巻く環境は劇的に変わりました。エコカーや自動運転、EV(電気自動車)を支える技術が求められ、以前はなかった部品がキーパーツになっています。例えば、初期のハイブリッド車に使われていた部品群も、今ではほとんど違う部品に変わっています。それに伴い、使用される部品もエンジンの熱と振動に耐えられる性能が要求されています。さらに、自動車の生涯走行距離をみても10万km以上が当たり前となり、長期間に渡って安全に動くことが求められます。自動車用コネクタについても、従来よりもワンランク上の高熱耐性やエンジンからの振動に長期間耐えられるタフさが必須となったのです。

未解明のコネクタ接点部障害。この難題解決に挑戦

コネクタの世界では、接点部障害の一つに微摺動摩耗(びしゅうどうまもう)という難題があります。この微摺動摩耗には、擦過摩耗(さっかまもう)と凝着摩耗(ぎょうちゃくまもう)の2種類があります。擦過摩耗は、マイクロレベルの微小動作を長期間繰り返し、接点部に酸化物が蓄積して起こります。凝着摩耗は、熱の膨張収縮の差により接触部の接続と剥がれを繰り返し、接点障害が発生します。潤滑がなかったり、硬さの差が少なかったり、類似の金属だったりすると、凝着摩耗が発生しやすい傾向にあります。
ところが、この擦過摩耗と凝着摩耗の複合摩耗が起きる詳細なメカニズムは十分に解明されていないのです。どちらか一つを解明しても、自動車環境には適しません。とはいえ、この微摺動摩耗の難題に向き合い解決しなければ、これからの自動車の性能に合致したコネクタは作れません。そこで、ヒロセ電機では、この難解な問題への対応策を踏まえた新たなコネクタの開発に挑みました。

“究極”を追求したECUインタフェース用コネクタ「Zシリーズ」

一般的に自動車用コネクタの微摺動摩耗対策は、摺動しても抵抗上昇を抑えるか、金めっきを選定するという考え方になりますが、接触理論上は摺動している限り、いつかは抵抗が上昇します。また、金めっきを選定する場合でも遅かれ早かれ、下地が出て抵抗が上昇します。そこで、「できる限り摺動を制御し、一度接合させた接触部を良好な状態で継続するにはどうしたら良いのか」という、接触理論に沿って開発を進めました。また、次世代コネクタとして、ワンランク上の熱と振動に耐えられることに加え、作業性やコネクタの取り扱いにも配慮し、小型かつ堅牢性を追求しました。

エンジンの近くにインバータが搭載されるとなると、5G(加速度)基準だったのが10G、そして30Gの振動に耐えられる品質をクリアしなければなりません。そして、熱衝撃試験(通電モニタリングテスト)を従来の1,000サイクルから3,000サイクルに上げても変化が無いようにしなければなりません。この高熱、振動耐性の2点を判定基準とし、研究と開発を重ねて基準をクリアし、高い通電品質を持った新たな製品の開発に成功しました。加えて、コネクタが使われるECUユニットや車両本体は、多くの場合、世界各地の工場で組立てられるので、接点バネが変形しないようにしたり、嵌合時のクリック音に配慮したりしました。構想から開発まで3年の期間を要し、テストアンドエラーを数え切れないほど繰り返したこともあり、その挑戦は非常にタフなものでした。それだけに自信を持ってお客さまに安心して使っていただけるコネクタが完成できたと考えています。

今後の取り組み。小型かつ高耐熱性のコネクタ開発を推進

近年ではEVやハイブリッド車などのパワートレイン系制御システムでは、燃費向上を目的に、小型のまま電子回路全体での高熱耐性が求められています。これを満たすために、小型かつ高熱耐性のコネクタ開発を当面の目標として果敢に挑戦しています。今後は、エンジン直結部品にも耐えられるコネクタを、市場へ投入したいと考えています。