Dream

対談
その3

代表取締役社長 石井 和徳 技術本部
自動車事業部 PMO室
芦田 智史

未来創造研究会のCグループとして石井社長と対峙したのは、現在ヒロセの柱として注力している自動車事業において、製販技のさまざまなプロジェクトマネジメントを担当している技術本部 自動車事業部 PMO室の芦田 智史だ。今回は、ヒロセの強みとして長年培われてきた“少数精鋭”という企業文化について。事業拡大の結果として新たな人材が急速に増えている状況のなかで、少数精鋭というヒロセの文化をどう生かしていくのか。また一方で人材活用のための新たな技術として目されているAI技術活用の可能性について、石井社長に質問した。

業務におけるAI技術活用の可能性について

芦田 : 未来創造研究会の中で議論になったのは、「ヒロセの強みって何だろう?」ということでした。その1つが「まぎれもなく“少数精鋭”だろう」と。少数精鋭の良さは、営業なのに品質や製造にも首を突っ込むといった、仕事の幅が広いことによる面白みや達成感だと考えています。しかし、自動車や産業機器の分野では新たなチャレンジで急速に人も増えており、今まで通り少数精鋭というわけにはいかない部分も。これまでと違うやり方、例えば人口知能(AI)などの新しい技術を活用することもあるのかなと考えています。その点についていかがでしょうか。

石井社長 : 確かに、今は自動車事業に人材を多く投入している状況があるのは間違いありませんが、“少数精鋭では生き残れないので人を増やしている”というわけではありません。単にリソースが不足しているために人を増やしているのであって、人を増やしていることと少数精鋭のマネジメントをどうしていくのかはまったく異なるポイントだと考えています。つまり、人を増やし、各々に活躍してもらい、少数精鋭の環境をどう作るのかが非常に重要な課題なのではないでしょうか。芦田君の言う通り、少数精鋭の良さは1人ひとりが活動して達成感や成果を感じられることで、それはすごく嬉しいことで、個人、そして会社の成長にもつながります。だからこそ、ヒロセにとって少数精鋭は大事なことなのです。

芦田 : 少数精鋭という文化の中で重要なのはどんなことだとお考えですか。製販技含めて「顔の見えるメンバーがいる」ということが背景にあると私自身は思っているのですが。

石井社長 : みんなが知り合いだから少数精鋭かというと、一面では間違いではないようなところはあるものの、それだけでやっていくのは難しい。グローバルにビジネス展開する時代に全員が常に知り合いでいられる組織はあり得ませんからね。そこで重要になってくるのは、やはり「コミュニケーション力」ということになってくるでしょう。知り合いかどうかではなく、コミュニケーションをしっかり取ることがとても大切になってきます。海外で働く人達は、言葉も文化も環境も違う中で育った人がたくさんいます。そういう状況だからこそ、お互いさらに密で理解、認め合えるコミュニケーション力が重要なのではないでしょうか。

芦田 : 今回私が挙げたAIという観点についてはいかがでしょうか。

石井社長 : 少数精鋭を実現する手段として、IT化を促進していきますが、今後はAIの有効活用も非常に重要だと思っています。コミュニケーション力をアップさせるためや生産性の向上など、さまざまな作業の効率化においてAIの重要性は今後どんどん高まってくるはずで、それをうまく活用できれば少数精鋭の実現にもつながると思います。いずれにしろ将来的なイメージとしてAIを無視して我々が市場で生き残っていけるかというと、それはちょっと厳しいでしょう。

芦田 : 私としては、AIを導入する過程で、何を学習させるのかという点が重要だと考えています。結局、AI導入にはヒロセにとってのコア業務を特定することが必要で、AIによる成果よりもその過程が一番大事なのではないでしょうか。今はどの業務も頑張ろうとして、コアでないところにもエネルギーを使っているように見受けられます。

石井社長 : 確かに、情報を収集したりデータを集めたりということにすごく手間取って、集め終えると「ああ終わった」といった“やり遂げた感”が出てしまう時もある。その後の分析や考察が重要なわけで、その下準備のためにAIを活用するような、ヒロセ流のAI活用をどうしていくのかを考えるのは大切だと思っています。具体的なところはまだまだで、AIの活用はこれからだという認識です。

芦田 : 例えば中途で入社された人が3カ月でヒロセに慣れることができるのかと言えば、明示されていない業務フローやルールがたくさんあって、慣れるのに時間がかかるのが現実です。そういうところにエネルギーを割くのであれば、そこはAIを活用して効率化したほうがいいはずです。AIというものが少し突拍子もない意見であるのは承知していますが、何がヒロセにとってコアで、そのために何のデータ蓄積が必要か考えることは、今から始めておかないと手遅れになるはずです。

石井社長 : その通りですね。

強みとして位置づけられる“少数精鋭”について

芦田 : 少数精鋭についてもう少しお聞きしたいのですが、少数精鋭が実感できていない社員も増えているのが現状だと私は思っています。ここは石井社長とは異なる意見ではありますが、顔の知らない人が増えていくのは、やはりシンプルに距離を感じるものです。また、他の部署が何の情報を元に動き、何に注力しているのか、すごく伝わりにくくなっている部分もあります。これについてはいかがでしょうか。

石井社長 : 実際に短期間に人を増やしているので、その気持ちも分からなくはないかと。極端な話をすると、この横浜センターでみれば、およそ5%の人が外国籍の方で、確かに数年前とは様変わりしている状況です。月を追うごとに人が増えているという部門もあり、環境の変化で周りが見えにくくなってきていると感じるのは当然です。少数精鋭と言いながら人をどんどん増やしていって、本当に少数精鋭がやれるのかという素朴な疑問を抱いている方もいるはず。何かしらの手立てを講じる必要はあると感じています。

芦田 : 石井社長を初め当社の幹部の皆さんは「コミュニケーションが上手」な方ばかり。ただ、そういうスキルにエネルギーを使わずとも、もっと会社の動きが見えるような環境を作って、少数精鋭の良さを発揮できればいいなと考えています。しかし、今日話を伺って、やはり少数精鋭にとてもこだわりを持っていらっしゃることが改めてわかりました。

石井社長 : 少数精鋭の良さは“ムカデ競争”の例えで先輩から説明を受けた記憶があります。ムカデ競争は人数が増えるとどうしてもスピードが落ちるもの。当然ながら2人のほうが歩幅を合わせやすく、絶対的に早くなるのです。そういったことを実感できるような雰囲気づくりが必要だなと痛感しています。このテーマはとても重要ですので、自分のやっている仕事も見ながら、どうやって少数精鋭の良さを広げていくのか、ぜひ各々が考えて欲しいと切に願っています。

芦田 : どんな仕事も細分化すればつまらなくなるので、「いわゆる大企業」よりもヒロセが良いと思えるのが、この少数精鋭という考え方です。少数精鋭についてはしっかり残していきたいと考えているのですが、今の自動車の事業にはいまだに人手が圧倒的に不足しています。もっとリソースを増やしていただけるとありがたいです。貴重な時間をありがとうございました。